ホーム > 柴 政雄
【思っていた以上に大好きだった父へ】
「お父さんを殺して私も死ぬ!」
包丁を持ち出した母がそう叫んだのは、父が認知症になってどれくらいたった頃だったでしょうか。
車で駆けつけようとして事故を起こしてはいけないと、逸る気もちを抑えながらタクシーと電車を乗り継いだことを思い出します。
誰よりも頼りになって、病気がちな母のことも父に任せておけば大丈夫!と思い込んでいました。
でも、そんな父が認知症になりました。
娘(父にとってはたった一人の孫)が大きくなってからは実家に行く頻度も減って、父の変化に気づけなかったことを、今でも後悔しています。
それでも、発症してからの数年間は、毎週一緒にどこかに出かけ、少し贅沢な旅行にも行って、楽しい思い出を沢山つくりました。
いよいよ施設に入ることになって、自宅に戻れなくなってからも、母と毎週会いに行って穏やかな時間を過ごしました。
「親孝行したいときに親はなし」なんて言いますが、ギリギリの滑り込みで、ほんの少しだけ親孝行できたかな?と考えています。
発症の時からお医者様に言われていたこともあり、残りの時間は分かっていました。
緩やかにその日が近づいていることも感じていましたから、本当にその日が来た時、あれほどの悲しみに襲われたことに自分で驚いてしまいました。
気持ちが落ち着くまでに2年かかりました。
父のことが、自分で思っていた以上に好きだったようです。
そんな父の波乱万象な人生を辿りながら、このLife Pageを綴ります。 長女 香里